〒
00 学習目標
01 メールとは
02 メールアドレス
03 メールサーバ
04 届くまでの流れ
05 SMTP / POP / IMAP
06 添付・CC・BCC
07 迷惑メール注意
08 まとめと用語
09 確認問題
学習目標
本講を終えると、以下の問いに答えられるようになる。
電子メールとは何か、どんな構造(宛先・件名・本文)を持っているかを説明できる
メールアドレスの形 名前@ドメイン がそれぞれ何を意味しているかを言える
「送る」と「受け取る」では別のしくみが動いていることを理解する
SMTP / POP / IMAP という3つのプロトコル名を聞いたとき、それぞれが「送信用」「受信用」のどちらかを答えられる
メールがメールサーバを経由して届くこと、相手がオフラインでも消えない理由を説明できる
CC と BCC、添付ファイルの違いを説明できる
迷惑メール・なりすましがなぜ起きるのかを直感的に理解する
このレッスンの目次
電子メールは「電子の手紙」
電子メール(e-mail) は、その名のとおり 電子化された手紙 のことです。紙の手紙が「便箋・封筒・宛名」で構成されているように、メールにも 宛先(To) ・ 件名(Subject) ・ 本文(Body) という決まった構造があります。インターネットを使った通信サービスとしては、Web と並んで最も古くから使われている仕組みの1つです。
POINT
電子メール = 「宛先・件名・本文」を持った 電子の手紙 。郵便と違って一瞬で届き、世界中どこへでも同じ料金(実質無料)で送れる。
メールと紙の手紙、何が同じで何が違う?
同じところ
宛先 がある(誰に送るかを書く)
件名/差出人 がある(何の用件か、誰からか)
本文 がある(伝えたい内容)
送ったあと 「相手が読むまでの時間差」 がある(郵便より短いだけ)
郵便局のような 中継してくれる存在 がいる(後で説明)
違うところ
到着までの時間が 数秒〜数分 (国境も関係ない)
1通あたり 追加コストがほぼゼロ (同時に何百人にも送れる)
写真・動画・書類などの 添付ファイル も送れる
送った内容は サーバに残り続ける (消さない限り後から読み返せる)
差出人を 偽る ことが比較的簡単(これが迷惑メールの温床)
メール1通の構造
電子メール 1通
ヘッダ: 配送と表示に使う管理情報
From
from@aaa.example
To
to@bbb.example
Subject
明日のミーティングについて
本文(Body)
伝えたい内容を書く場所。必要なら添付ファイルも付く。
図の見方:上の青帯が ヘッダ (From / To / Subject などの管理情報)、下の薄クリーム色が 本文 。普段のメール画面で見える宛先・件名・本文の裏側にも、配送に使う情報が整理されている。詳細は 標準 編で扱う。
考えてみよう: Gmail、Outlook、大学のメール、スマホの「メール」アプリ……見た目は違っても、すべてこの「宛先・件名・本文」の構造を共有しています。だから違うサービスのユーザ同士でも、当たり前のようにメールを送り合えるのです。これが「世界共通のしくみ」のありがたさ。
情報Iで覚えること 電子メールは 宛先(To)・件名(Subject)・本文(Body) という共通構造を持つ「電子の手紙」で、世界中どこへでもほぼ無料・短時間で届けられる。
メールアドレスの構造:@ は何の区切り?
メールアドレスは 名前@ドメイン の形をしています。たとえば student@mail.example.com 。ぱっと見ても区切りが分かりづらいですが、実はこの @(アットマーク) がとても重要な意味を持っています。
POINT
名前@ドメイン の 左側(local-part) = そのサーバ内での個人の名前、 右側(ドメイン) = 世界中のどのメールサーバか。
@ は 「at(〜にいる)」 の意味。「name さん at(〜にいる) example.com 」と読む。
分解してみよう
student
@
mail.example.com
local-part(ローカル部)
そのメールサーバの中での個人の名前
同じドメイン内で重複しない ように割り当てる
例: 学籍番号・社員番号・ニックネーム
※ 大文字小文字の扱いはサーバ依存
@
at と読む
左と右を
区切る
name at domain
ドメイン部
世界中のどのメールサーバ に属するか
ピリオド区切りの階層構造(右ほど大分類)
.com = トップレベルドメインの一例
example = 登録名 / mail = メールサーバ
図の見方:メールアドレスは @ の左右で役割がはっきり分かれている。左は「そのサーバの中での名前」、右は「世界中のどのサーバか」。@ がなかったら「誰宛か」と「どこに送るか」が混ざって区別できない。
ドメイン部のしくみ(復習)
ドメイン部の mail.example.com は、右から左に向かって 大きい分類から小さい分類へ並んでいます。.com (トップレベルドメイン)→ example (登録された名前)→ mail (メール用のサーバ)、という階層です。これは 第5回 DNS で学んだ ドメイン名 の仕組みそのもの。メールも Web と同じ住所体系を借りて動いています。
小問:メールアドレス local-part@example.com の @ は、何と何を区切っている?
A. 名字と名前を区切る
B. 個人の名前(local-part)とメールサーバのドメインを区切る
C. 件名と本文を区切る
D. アドレスの大文字部分と小文字部分を区切る
正解:B 。@ の左 = 個人の名前(local-part)、右 = どのメールサーバか(ドメイン)。「name さん at(〜にいる) domain.com」と読むと意味が腑に落ちる。@ がなければ世界中のどこのサーバへ送ればよいか分からない。
もっと詳しく:なぜ @ が選ばれたのか
1971年、Ray Tomlinson(レイ・トムリンソン) という技術者がネットワーク経由のメールを最初に作りました。「ユーザ名」と「コンピュータ名」を区切るのに、当時のキーボードにあって 名前にまず使われない記号 として @ を選んだ、と言われています。商業会計で使われる「at(単価)」の記号と同じです。ちなみに彼が初めて送ったメールの内容は本人も覚えていない、というほど何気ない出来事だったそうです。[要確認:出典は Tomlinson 自身のインタビュー]
つながる知識: Web の URL https://example.com/page にも example.com というドメインが入っていましたね。メールのアドレスと Web の URL は 同じ「ドメイン名」というしくみ を共有しているので、組織ごとに自分のドメインを取れば Web もメールも同じ名前で運用できる、というご利益があります。
情報Iで覚えること メールアドレスは 名前@ドメイン の形で、@ の 左 がメールサーバ内の個人名(local-part)、右 が世界中のどのメールサーバかを示すドメイン名。
メールは「直接」相手に届くわけではない
ここが多くの人が誤解しているポイントです。「送信」を押した瞬間、あなたのスマホやPCから相手のスマホやPCに直接届いている わけではありません。間に メールサーバ という中継役のコンピュータがいて、そこにいったん預けられます。郵便でいう「郵便局」の役割です。
POINT
送信者のメール → 送信側メールサーバ → 受信側メールサーバ → 受信者。
途中のサーバが 常に起動して待っていてくれる から、相手の電源が切れていてもメールは消えずに届く。
なぜサーバ経由なのか?
もし PC から PC に直接届く設計だったとしましょう。あなたが夜中の3時にメールを送ったら、相手のスマホは寝ている時間で電源オフかもしれません。直接届ける設計だと、その瞬間に 相手がオンラインでなければ届かず消えてしまう ことになります。これは困りますね。
そこで「常に起動している中継役 」を間に置きます。これが メールサーバ 。送信者は中継役にメールを預けるだけ、受信者は都合のよいときに中継役からメールを取りに行く、という仕組みになっています。
Q. 「メールが消えないのはなぜ?」相手がオフラインでもメールが届く理由を、自分なりに考えてからクリック。
解答を見る
送ったメールは、まず 送信側のメールサーバ に預けられる
そのサーバが 受信側のメールサーバ へ送り、受信側サーバの中の あなた専用の置き場(メールボックス) に保管される
メールボックスは サーバが消さない限りずっと残る 。だから受信者は数日後にスマホを起ち上げてもちゃんと読める
送信者と受信者が 同時にオンラインである必要がない 。これがメールの大きな利点
これは郵便受けと全く同じ発想:配達員(=サーバ)が玄関まで来てくれて、住人が留守でも郵便受け(=メールボックス)に入れていってくれる。
大きな図:郵便にたとえてみる
送信者
from@aaa.example
送信側メールサーバ
(郵便局A)
aaa.example の窓口
インターネット
受信側メールサーバ
(郵便局B)
bbb.example の窓口
bob 専用
メールボックス
受信者
to@bbb.example
①送信
②転送
③配達
④受信者が取りに行く
送信側は「送る 」、受信側は「取りに行く 」 — 別の動作なので別のしくみ(プロトコル)を使う
※ 受信者がオフラインでも、メールはメールボックスにずっと保管されている
図の見方:メールは「自分のスマホ → 自分の郵便局 → 相手の郵便局 → 相手のスマホ」と4段階で旅をする。途中の2つの郵便局(=メールサーバ)は 常に起動 していて、いつでもメールを受け付けたり預かったりしてくれる。だから送信者と受信者が同時にオンラインでなくてもよい。
つながる知識: インターネット上のサービスは多くが「サーバ・クライアント」という関係で動いています(第6回 でも出てきました)。Web の場合は 1台のサーバ に大勢のクライアントがアクセスする形ですが、メールは 「送信者の郵便局」と「受信者の郵便局」 の2つのサーバが連絡を取り合うのが特徴です。
情報Iで覚えること メールは送信者から受信者へ直接届くのではなく、常時起動している メールサーバ(送信側・受信側) を中継して届く。だから受信者がオフラインでもメールは消えない。
届くまでの流れをステップで追う
では実際に、Alice さん(from@aaa.example ) が Bob さん(to@bbb.example ) にメールを1通送る場面を、5つのステップ に分けて追っていきましょう。「次へ」ボタンを押しながら見てください。
Alice
送信者のPC
送信SMTPサーバ
aaa.example
受信SMTPサーバ
bbb.example
Bob
受信者のPC
①メール作成
②SMTPで送信
③SMTPで中継
④メールボックスに保管
⑤POP/IMAPで取得
ステップ1. Alice がメールソフト(Gmail のブラウザ画面・Outlook・スマホの「メール」アプリなど)を開き、宛先 to@bbb.example ・件名・本文を入力して「送信」ボタンを押す。この時点ではメールはまだ Alice の手元の機器にあるだけ。
ステップ2. Alice の機器は、自分が普段使っている 送信側メールサーバ(aaa.example の窓口) へメールを渡す。このときに使う「お約束」が SMTP(エスエムティーピー) というプロトコル。「Simple Mail Transfer Protocol」の頭文字。
ステップ3. 送信側サーバは、宛先のドメイン部 bbb.example を見て、「これは bbb.example の管轄だな」と判断し、 受信側メールサーバ へインターネット経由で配達する。サーバ間の配達にも SMTP を使う。場合によっては途中で別のサーバを 中継 することもある(海外の郵便局を経由するイメージ)。
ステップ4. 受信側サーバは、メールを受け取ると Bob 専用の メールボックス に保管する。ここでメールは「Bob のもの」として静かに待つ。Bob が何時間オフラインでもメールはここで待ち続ける。
ステップ5. Bob がメールアプリを開く(=取りに行く)。ここで使うのが POP(ポップ) または IMAP(アイマップ) という別のプロトコル。サーバから自分宛のメールをダウンロードして画面に表示する。送信のときとは 別のしくみ なのがポイント。
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図の見方:5つのステップを順に追うと、メールは「送る 」と「取りに行く 」の2つのフェーズに分かれていることが分かる。前半(②③)はずっと SMTP、後半(⑤)は POP か IMAP。覚えやすく、混乱しないように切り分けて理解しよう。
動きをアニメで見てみよう
送信者
送信側サーバ
受信側サーバ
受信者
SMTP
SMTP(中継)
POP / IMAP
▶ 再生
⏸ 一時停止
⟳ 最初から
図の見方:封筒(=メール)が「送信者 → 自分の郵便局 → 相手の郵便局 → 相手」と旅をする様子。経路の前半(赤)では SMTP、最後の取り出しだけ別色(緑) = POP/IMAP に変わる。色が変わるところで プロトコル(お約束) も変わる ことに注目。
情報Iで覚えること メールは「送信者 → 送信側サーバ → 受信側サーバ → メールボックス → 受信者 」と中継され、前半の「送る」は SMTP 、後半の「取りに行く」は POP / IMAP と役割が分かれる。
SMTP / POP / IMAP:3つのプロトコルの役割
メールを支えるプロトコルは大きく3種類あります。でも、難しく考える必要はありません。 「送る側」と「取りに行く側」で別の言葉を使う 、それだけ覚えれば十分です。中身の細かい話は 標準 編で扱います。
POINT
SMTP = メールを 送る ためのお約束(送信側専用)
POP (POP3) = メールサーバから ダウンロードして取り込む 受信用
IMAP = メールを サーバに置いたまま読む 受信用
POP3 と IMAP を見比べる
SMTP — Simple Mail Transfer Protocol
名前の意味: 「シンプルなメール転送のお約束」
用途:メールを 送る (クライアント → サーバ、サーバ → サーバの両方)
方向:基本は 送り手から受け手へ「押し付ける」 プッシュ型
例えるなら:郵便ポストに手紙を投函する → 郵便局が次の郵便局に運ぶ → これらすべての段階で使う共通言語
受信用には 使わない (=「メールを取り出す」用途には別のプロトコルが必要)
豆知識: 「Simple」と名前についているとおり、設計思想はとてもシンプル。だからこそ世界中で長く使われてきた一方、シンプルすぎて 差出人を偽る のも簡単になってしまったという側面もある(後述の迷惑メール問題)。ただし現代のメールでは SPF / DKIM / DMARC などの認証技術で補強 されており、SMTP 自身は変わらなくても、運用の上では本人確認のしくみが上乗せされている。
POP — Post Office Protocol(現行は POP3)
名前の意味: 「郵便局のお約束」(version 3 が現役)
用途:メールサーバから自分の機器へ メールをダウンロード する
例えるなら:郵便局に行って自分宛の手紙を 持ち帰る 。局には残さない
発展 ここから先は POP の細かい挙動・設定の話。情報I レベルでは「POP = ダウンロード型の受信」のイメージだけで十分。
発展 動作:基本的にサーバから手元に 取り込んで、サーバ側からは消す (設定で残すこともできる)
発展 長所:オフラインでも自分の機器に保存されたメールを読める
発展 短所:複数の機器(PC・スマホ・タブレット)で 同じメールを共有しづらい (取りに行った機器にしかない)
IMAP — Internet Mail Access Protocol
名前の意味: 「インターネット越しにメールにアクセスするお約束」
用途:メールサーバ上のメールを サーバに置いたまま 読み書きする
例えるなら:郵便局の 個人ロッカー に手紙が入っていて、出先からも家からも同じロッカーを開けて読める
長所:スマホでも PC でも同じメールが見える 。一方の機器で「既読」にすると、もう一方でも既読になる
発展 ここから先は IMAP の細かい挙動の話。情報I レベルでは「IMAP = 複数端末で同期できる受信」のイメージだけで十分。
発展 動作:必要な部分だけを取り寄せて表示。既読・未読・削除・フォルダ分けなどの状態も サーバ側に同期 される
発展 短所:常にネット接続が要る(オフラインで使えるよう、最近のメールアプリは内部でキャッシュも持っている)
これが「スマホでも PC でも同じメールが見える」しくみ: Gmail や iCloud メール、大学のメールなど、現代の主要サービスは 裏で IMAP(または同等の仕組み) を使っている。だから機種を変えてもログインすれば過去のメールがすべてそのまま見える。
かんたん対比表
プロトコル 方向 役割 覚え方
SMTP 送信 クライアント→サーバ、サーバ→サーバの両方で「送りつける」 「Send」のS = Simple Mail Transfer
POP (POP3)受信 サーバから手元にダウンロード(基本サーバから消す) 「Post Office」局から持ち帰る
IMAP 受信 サーバ上のメールにそのままアクセス・複数端末同期 「Access」サーバに置いたまま使う
HTTP(Webメール) 送信・受信 ブラウザでメールサーバに直接アクセス(Gmail 等) Webと同じ仕組みで包んで使う
Webメール(Gmail / Yahoo!メール / Outlook on the Web 等) は、ブラウザ上で動くのでユーザから見えるプロトコルは
HTTP / HTTPS (
第6回 )。ただし
Web メールサーバの裏側では SMTP / IMAP が動いて 他のメールサーバとやり取りしている。つまり「ブラウザでメールを使う」のは、間に Web サーバを1段挟んだ便利な使い方、と理解すればよい。
考えてみよう: なぜわざわざ「送信用」と「受信用」のプロトコルを分けたのでしょう? 送信は「相手の都合に関係なく押し込む」動作、受信は「自分の都合のいいときに取りに行く」動作で、性質がまったく違うからです。性質に合わせてしくみを別にすることで、それぞれをシンプルに作れる、というのが設計の妙。
情報Iで覚えること SMTP はメールを送るためのプロトコル、POP はサーバから手元にダウンロードする受信用、IMAP はサーバに置いたまま複数端末で同期して読む受信用。
便利な機能:添付ファイル・CC・BCC
メールには本文以外にもいくつか覚えておきたい機能があります。とくに 添付ファイル と CC・BCC は、社会人になってからも毎日使う基本機能です。
添付ファイル
本文だけでなく、写真・PDF・スプレッドシート・スライド などのファイルを一緒に送れる機能。郵便でいう「同封物」です。
クリップアイコン(📎)から選ぶのが一般的
多くのサービスでは 1通あたりのサイズ上限 があり(数十MB程度)、超える場合はクラウドストレージ共有が推奨される
知らない相手から届いた添付ファイルを 不用意に開かない (マルウェアの感染源になる)
注意: 添付ファイルはウイルス・マルウェアの主要な侵入経路の1つ。差出人に心当たりがない 添付ファイル(特に .exe , .zip , マクロ付き Office ファイル)は開かない。判断に迷ったら情報担当・先生に相談を。
CC と BCC:同時に複数の人に送る
1通のメールを 複数の宛先に同時に届ける しくみ。3つの欄を使い分けます。
To(宛先) ・ CC(カーボンコピー)
To :そのメールの主たる相手。返信を期待する相手。
CC :「参考までに見ておいてほしい」相手。直接の依頼ではないが情報共有が必要な人。
To と CC に書かれたアドレスは 受信者全員に見える (誰にも送ったかが筒抜け)。
例:上司に依頼し、関係者にもCCで知らせる場面など。
BCC(ブラインドカーボンコピー)
「他の受信者に 気付かれずに 送る」用途。
BCC に書いたアドレスは、他の受信者には表示されない 。
例:大勢の関係者に同じ案内を送るとき(他人のアドレスを互いに知らせない=プライバシー保護)。
使い方を間違えて To/CC で大勢に送ると、全員のアドレスが流出する事故 が現実によく起きる。要注意。
もっと詳しく:CC と BCC の違い(典型的な失敗例)
サークルの100人にイベント告知を送りたい場合を考えてみましょう。
×NG: 全員のアドレスを To (または CC )に並べる → 受け取った全員に「他99人のメールアドレス」が知られてしまう。これは 個人情報漏洩 として問題になることがある。
○OK: 自分自身を To に書き、100人を全員 BCC に入れる → 各人には他の宛先が見えず、個人情報が守られる。
大学の課題提出やインターン応募などで「BCC で先生にもお送りします」と書く場面もあります。意図を持って使い分けるクセをつけましょう。
つながる知識: 「他の受信者に気付かれず複製を送る」という発想は、 カーボンコピー(複写紙) という昔の事務道具に由来します。CC = Carbon Copy、BCC = Blind(見えない) Carbon Copy。電子化された今でも名前だけ残っている、という歴史の名残です。
情報Iで覚えること 添付ファイル は同封物、CC は他の受信者にも見える同報、BCC は他の受信者には見えない同報。大勢への一斉送信は BCC を使ってアドレス漏洩を防ぐ。
迷惑メールとなりすましに注意
便利な反面、メールには 迷惑メール(スパム) や なりすまし という昔ながらの問題があります。これは前述のとおり、SMTP がもともと 性善説 でシンプルに作られていたために起きる問題です。
なぜ「差出人」が偽れるのか?
封筒に手書きで「差出人:〇〇」と書くのは誰でもできますね。それと同じで、SMTP で送られるメールの「From: …」も 送信者が自分で書く欄 。だから SMTP 単体では本人確認なしに真偽を保証できない。これを悪用したのが なりすましメール(フィッシング) 。
ただし現代のメールでは 、SMTP に SPF / DKIM / DMARC といった認証技術が組み合わされ、ドメイン単位で「本物らしさ」を機械的にチェックする仕組みが普及している。「SMTP は常に認証ゼロ」ではなく、「素の SMTP には認証がないので外側で補強している」と理解しよう。
気をつけるべき典型例
銀行・通販サイト・宅配業者を装ったメール で、偽のログイン画面に誘導してパスワードを盗む(フィッシング詐欺 )
身に覚えのない「未払い金請求」「アカウント停止」 などの不安をあおる文面
怪しいリンクや添付ファイル 。一見大学やサービスからのメールに見えても、リンク先のドメインがまったく違う
身を守るためのチェックポイント
送信者のメールアドレス をしっかり確認する。表示名は偽れるが、@ の右側のドメインがおかしくないか?
リンク先 URL をクリック前にマウスオーバーして確かめる。見覚えのある名前でも、よく似せた偽ドメインの可能性
添付ファイル をいきなり開かない
不安なときは「メールに書かれた連絡先 」ではなく、 公式サイトに自分から ブックマークなどでアクセスして確認する
もっと詳しく:なぜ昔の SMTP は本人確認をしなかったのか
電子メールが生まれた1970〜80年代、ネットワークは大学や研究機関の間だけで使われており、利用者はごく少数で互いに顔見知りも多い世界でした。誰もメールを悪用することなど想定していなかったのです。悪用が問題になり始めたのは、インターネットが商用化され誰でも参加できるようになってから (1990年代以降)。後付けで認証のしくみ(SPF、DKIM、DMARC など)が追加されてきましたが、「最初の設計が性善説」という事実は変わりません。これは情報技術全般によくある「性能や利便性のために単純にしておいたら、後で安全性が問題になる」典型例として知っておくとよいでしょう。
情報Iで覚えること SMTP は 差出人欄を自分で書く しくみのため、なりすまし(フィッシング )が起こり得る。送信元アドレス・リンク先ドメイン・添付ファイルを必ず確認し、不審なら開かない。
まとめと用語チェック
SUMMARY
1. 電子メール = 「宛先・件名・本文 」を持った電子の手紙
2. メールアドレス 名前@ドメイン は「そのサーバ内の名前 @ どのサーバか 」を表す
3. メールは サーバ経由 で届く(送信者 → 送信側サーバ → 受信側サーバ → 受信者) ─ 郵便局メタファー
4. 「送る」と「取りに行く」は別のしくみ:SMTP は送信用 、POP / IMAP は受信用
5. IMAP はサーバに置いたまま読むので、スマホ・PC・タブレットで同じメールが見える
6. CC は他の受信者に見える同報、BCC は他の受信者から見えない同報
7. SMTP は性善説で設計されたため 素のままでは差出人を偽れる (=フィッシング・迷惑メールの温床)。ただし現代では SPF / DKIM / DMARC などの認証技術で補強 されている。詳しい技術的対策は次々回・標準編で
用語チェック
用語 1行説明
電子メール(e-mail) 宛先・件名・本文を持つ電子化された手紙
メールアドレス 名前@ドメイン の形をした個人の宛先
local-part(ローカル部) @ の左側。そのドメイン内での個人名
ドメイン部 @ の右側。世界中のどのメールサーバかを表す
メールサーバ メールを中継・保管する常時稼働のコンピュータ。郵便局に相当
メールボックス サーバ上にある自分専用の受信メール置き場
ユーザエージェント / メーラー メールを読み書きするアプリ(Gmail のブラウザ・Outlook・スマホのメールアプリ)
SMTP メール送信のプロトコル。Simple Mail Transfer Protocol
POP / POP3 サーバからメールをダウンロードする受信プロトコル。Post Office Protocol
IMAP サーバに置いたまま読み書きする受信プロトコル。複数端末で同期しやすい
Webメール ブラウザでメールサーバにアクセスする方式(Gmail など)。表面上は HTTP/HTTPS
To / CC / BCC 主たる宛先 / 同報(他者にも見える) / ブラインド同報(他者から見えない)
添付ファイル メール本文に同封する画像・文書ファイル等
フィッシング / なりすまし 差出人を偽装し、偽サイト等で個人情報を盗む手口
NEXT: 次回 第8回は 「暗号の基礎(共通鍵 / 公開鍵)」 。「通信路で盗み見されないようにする」「差出人が本物だと確かめる」ためのベース技術を学ぶ。これがメール認証(SPF / DKIM / DMARC) や HTTPS の鍵マークの土台になる。
確認問題
問1. メールアドレス name@example.com の @ の役割として最も適切なものを1つ選べ。
次の選択肢から最も適切なものを選択してください。
A. 件名と本文の境目を表す記号
B. 個人の名前(local-part)とメールサーバのドメインを区切る記号
C. メール送信時に必ず付ける挨拶文の代わり
D. メールが暗号化されていることを示すマーク
正解:B
@ はメールアドレスの中で「左 = local-part(個人の名前)」と「右 = ドメイン(メールサーバの所在)」を分ける役割。「name さん at(〜にいる) example.com」と読むと意味がはっきりする。Aは件名と本文の話、Cは挨拶のしくみ(プロトコルそのもの)の話、Dは暗号化の話で、いずれも別の概念。
問2. メールが「相手がオフラインのときに送っても消えずに届く」のはなぜか。最も適切な説明を1つ選べ。
次の選択肢から最も適切なものを選択してください。
A. メールは送信者の機器のメモリに保管され続けるから
B. 受信者がオフラインのときは自動でファクスに切り替わるから
C. 途中の メールサーバ がメールをいったん保管し、受信者が来るまで待っているから
D. メール本体が空中を物理的に飛んで待機しているから
正解:C
メールは送信者の機器から相手の機器へ「直接」届くのではなく、 常時起動しているメールサーバ を中継して届く。受信側サーバ内の「メールボックス」に保管されたまま、受信者が取りに来るのを待つ。郵便受けに郵便物が入って住人を待つのと同じ。Aは誤り(送信側に残るとは限らない)、B・Dも誤り。
問3. 次のうち メールを送る ときに使うプロトコルとして最も適切なものを1つ選べ。
次の選択肢から最も適切なものを選択してください。
A. SMTP
B. POP3
C. IMAP
D. DNS
正解:A
送信に使うのが SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)。POP3 と IMAP は 受信用 なので逆。DNS はドメイン名から IP アドレスを引くしくみで、メール送信の際に「相手のメールサーバはどこ?」を調べる場面で裏で使われるが、メール本体を運ぶわけではない。
問4. IMAP の特徴として最も適切なものを1つ選べ。
次の選択肢から最も適切なものを選択してください。
A. メールを送信するためのプロトコルである
B. メールサーバから自分の機器に必ずダウンロードし、サーバから消す
C. メールの本文を自動で暗号化するしくみである
D. メールをサーバに置いたまま読み書きでき、PCとスマホで同じ状態を共有しやすい
正解:D
IMAP は サーバ常駐型の受信プロトコル 。サーバ上のメールにアクセスし、既読・未読・フォルダ分けなどの状態もサーバに保存される。だからスマホで既読にしたメールが PC でも既読になる。Aは送信(SMTP)、Bは POP の特徴、Cは暗号化(別の仕組み:TLS など)で、いずれも誤り。
問5. BCC の使い方として最も適切なものを1つ選べ。
次の選択肢から最も適切なものを選択してください。
A. 件名を太字で目立たせる機能のこと
B. 他の受信者に 気付かれずに 同じメールを送りたい相手を指定する
C. メールの返信を必ず受け取りたいときに使う
D. 添付ファイルを暗号化するための欄である
正解:B
BCC(Blind Carbon Copy) に書いたアドレスは、他の受信者には表示されない。多人数に同じ案内を送るとき、互いのアドレスを知らせないために使う。To や CC で大勢に送るとアドレスが筒抜けになり、個人情報漏洩につながる。A・C・Dはいずれも別機能の誤った説明。